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CRCはそれほど高い専門性は要求されない。
政府や特殊法人の「お墨付き」を切望する我々医療関係者や企業のメンタリティも反省すべきであり、CRCの問題はその好機であるととらえるべきであろう。
この意味で、治験のまさに最前線に立たなければならない臨床医と医療機関こそが中心となって、産業界と協力してこの問題に取り組む必要がある。
〈患者・国民〉日本では一般にものごとの約束に書面で契約を交わすという習慣が少ない。
インフォームドコンセントを書面で得ることの難しさは、医療の現場では想像以上である。
長時間待たされている「早期がん」であったとして「診断名を告知してほしいですか?」←86%が「イエス」。
「早期がんであった場合は予後についても知らせてほしいですか?」←82%が「イエス」。
「進行がん」であったとして「診断名を告知してほしいですか?」←67%が「イエス」。
「進行がんであった場合は予後についても知らせてほしいですか?」←63%が「イエス」。
「服薬している薬の名前を知っていますか?」←28%が「知らない」。
ほかの患者に気兼ねしながら、説明に長い時間をかけても、その場での答えはほとんど「家族と相談します」となる。
家で相談すれば、家族は医師から直接説明を受けているわけではないので当然反対意見が多くなる。
場合によっては「人体実験を行っている医師」などの不信感を持たれ、せっかく築いた信頼関係を失うということもよくある。
しかもこれが「公務」、あるいは私立医療機関でも「通常の仕事」の一部ということでは、治験担当医師にはなんらのインセンティブももたらされない。
また、「がん」などの生きるか死ぬかの状態とか、あるいは画期的な新薬の場合は別として、優れた既存薬がある疾患での治験はきわめて難しい。
現在の国民皆保険のもとでは、患者に積極的な気持ちにさせるものなしには治験が非常に難しいということでもある。
日本人の自己決定の意識についても考えてみる必要がある。
「がん告知」に関して無作為抽出した日本人4500人を対象とした最近の我々の調査(1997年)は、日本人の治療における自己決定の意識の傾向を次のように明らかにしている。
ICHの基本要件は、要約すれば倫理性と科学性の2点といえよう。
ICHは細則の厳格な運用を求めているわけではなく、基本的な原則を守れば柔軟な運用が行えるものと私はとらえている。
基本的な原則を満たした上で最も求められることこそ重要で、それは「科学的でしかも革新的であれ!」ということである。
これを推進するには、各サイドのインセンティブを十分に追求することである。
それにはまず第1に、「治験の最前線での患者の利益を守る立場にある医師の資質の向上」が必要である。
クオリティとプロフェッショナリズムこそが、質のよい、しかも効率的な治験に必須であることを認識すべきである。
また、Hb大学、J・h大学、Mg大学等にあるような臨床疫学、生物統計学などを教える公衆衛生学の修士課程の大学院教育を充実させる必要がある。
医師も大学も病院も、質のよい治験は研究資金の大いなる供給源として理解し、これをサポートするインフラストラクチャーを病院内につくらなければならない。
この解釈にはいろいろありうるが、情報の内容によってその希求度が変化するのは、欧米の文化ではあまり見られない現象である。
ただこれらの結果は、インフォームドコンセントの前提である医療における患者一人ひとりの自律性が、いまだ多くの日本人には希薄であることを示しているといえる。
こうした医師と患者の関係は、医師だけの責任ではなく、また欧米の文化が常に正しいわけでもない。
日本の文化に根ざしたメンタリティや価値観が築いてきた医師と患者の関係がそこにはある。
ここに欧米流の価値観でつくられたGCPを導入する難しさの一端がある。
第2に、このような考え方を具現化した上で、今後の治験は、メーカーと同様に、サービスと競争によって評価されて価値(治験費用)が決まることを確認したい。
このような案件に対し、行政は介入するという方向ではなく、規制を撤廃し、国内産業の競争と育成を第1とすれば、日本における治験のあり方は、優れて「科学的でしかも革新的」なものになるであろう。
第3に、メーカーやCROも、自律的に考え、人材を育成し、治験システムをつくることが必要である。
要は、医療、創薬、治験にかかわるすべてが、こぞって患者と国民にポジティブな印象を与える新薬の開発と治験のシステムをつくることである。
振り返ってみれば、護送船団方式、横並び意識は製薬業界も例外ではなかった。
そこへ、かなり突然にICH‐GCPで治験をやることになったわけである。
従来の日本のシステムとなじまないのは当然であるが、しかし世界は猛スピードで変わっている。
金融業界の轍を踏んではならない。
ICHという「黒船」に対しては、日本の経済構造の一部としての製薬業界をどうしたいのか、医師を含めて広く健康産業をどうしたいのか、といった国民のニーズに応える早急な対応、スピードこそが大切である。
21世紀の医療へ再編成進む医薬品産業医薬品産業の未来どの産業もいまリストラクチャリング、リエンジニァリングを迫られ、その結果、程度の差こそあれ再編成が進んでいる。
医薬品業界も例外ではなく外資を中心に再編成が進みつつある。
日本はICHおよび、新GCP(臨床治験のための国際的ガィドラィンー医薬品の臨床治験の実施に関する基準)制度が施行されたことにより、再編成が起こることが予想される。
しかしハーモナイゼーションが進みつつあるとはいえ日本はまだ鎖国的な状況の中にあり、その再編成の波からはいまのところなんとか逃れられている。
ひと昔前までは、アメリカにおいても医薬品産業は失業率が低い産業の1つであったが、いまでは再編成が続いたこともあり、失業率は急速に高まった。
その一方、ひとたび業界全体を巻き込んだ再編成が起こると、資源が放出され流動化が引き起こされることになるが、その受け皿としての役割をベンチャー企業が果たし、その資源を吸収してきた。
つまり業界の再編成は、ベンチャー企業が成長のために必要とされる資源の確保を容易にした。
大手の企業は合併を機に経営の効率化を図るために、重複部門である管理・生産・開発などの合理化を推進し資源を外に放出してきた。
放出された経験豊かな優秀な人的資源を成長性の高い若いベンチャー企業が吸収することにより、業界の再編成が促進されることになった。
産業全体では大手企業の経営の効率化とニュービジネスの創出という一石二烏の構図を描くことができるわけで、あながち悪いことばかりではないのである。
願わくば、だれもがクラッシュよりもソフトランディングを望むわけであるが、これは望んでもかなうものではない。
しかし行政側の薬剤費抑制という近視眼的な展開と、その卯に伴う環境の急激な変化と経営者のややもすれば驕りからくる対応の悪さは、ソフトランデイングの可能性を小さくすることになる。
